心の傷を手当てします〜「包帯クラブ」

心の傷を手当てします〜「包帯クラブ」

山田直市郎2007/08/07 日本映画NA
「包帯クラブ」監督・原作者・出演者 記者会見(東京・2007年7月23日) http://202.90.10.24/janeye/eiga/pc/070723_houtaiclub_kaikenok_pc/01/070723_houtaiclub_kaikenok.html

 「包帯クラブ」とは、インターネットを通して「“傷ついたできごと”を投稿してもらい、傷ついた人の傷ついた場所に包帯を巻きに行き、手当てした風景をデジタルカメラで撮影し、投稿者のアドレスに送る」という活動だ。

 クラブのルールは5つ。(1)傷ついた人の傷ついた場所に包帯を巻きに行く(2)それをデジタルカメラで撮影し、傷ついた本人へメールを送る(3)活動範囲は市内に限る(4)報酬はもらわない(5)包帯代は部員のカンパでまかなう。

 ワラは高校3年生。家族は母と弟。卒業したら就職しようと思っている。誤って切った手首の傷をリストカットだと決め付けられ、安易なイメージでしか自分を見ない世間に愛想をつかしている。ささやかな自分の生活を守るため懸命に生きると、実は誰かの大切なものを奪うことがある──という現実に、絶望すら感じ始めていた。

 ある日、病院の屋上のフェンスの上に登り、街を見ていたワラは、不思議な少年・ディノに声をかけられる。ワラが自殺しようとしているように見えたらしい。ディノはワラの手首からほどけ落ちた包帯を手にとり、フェンスに結び付け「手当てや」と言った。とっさに何のことかわからなかったが、ワラの心の傷に手当てがされたらしい。後日、ワラは親友のタンシオの失恋話を聞いて、彼女の苦い思い出の場所に包帯を巻いてみた。「すっごくいい!」とタンシオはしきりに言い、メル友に包帯の効能を伝え、この行為に興味をもった浪人生・ギモと発案者のディノも加わって「包帯クラブ」が始まった。

 ワラたちは、さまざまな依頼に応えてアイデアをめぐらせ、包帯を巻いていく。癒しを与える喜びに充実感を覚えるワラたちだったが、他人の傷を見るたびに自分の傷もうずく。そんな時「クラブの行為は偽善だ」という告発がウェブサイトに書き込まれて警察沙汰に発展。サイトは閉鎖に追い込まれる。

 ワラの心の傷は、大きく2つある。1つは両親が離婚したことで、父親に捨てられたという感覚。もう1つは中学生の時の親友テンポ、リスキと疎遠になってしまったことだ。ちょっと冷めている彼女だが、包帯クラブに参加するうちに「これはなかなかいいかも」と思い始めたのではないだろうか。

 タンシオの悩みはズバリ「恋愛」だ。惚れっぽくて振られてばかりいる彼女。いつも彼女の恋愛話を聞き飽きているワラが、なにげなくブランコに包帯を巻いてあげたことがきっかけで、「包帯クラブ」が発足するのだが。ギモは小学校の頃のできごとをだれにも言えずにいたが、ある依頼がきっかけで依頼者と自分の傷に包帯を巻くことができた。

 そしてディノには、とても重い心の傷がある。それに気付いたのはワラである。「あんたにも包帯を巻いてほしいところがあるんじゃないの?」。ワラの質問に、「包帯を巻いてはいけない傷なんや」と、なんともいえない目をして言うディノ。自分は決してその傷を忘れてはならない、と自分自身を痛めつけるような行動に走る彼。本心をチラッと見せたのは「病院の屋上でお前が死のうとしていなかったら、俺がするところだった」と語ったことだ。彼女と出会った屋上のフェンスに包帯をまいた時、彼の心に包帯を巻いたのかもしれない。それに気がつくワラ。

 物語の軸は、ディノの決して語られることのない「心の傷」とワラの一見冷めているような心の中に渦巻く「傷」である。「包帯を巻く」という行為によって、それぞれの傷が癒されていくことで、物語は展開していく。

 ディノを演じるのは柳楽優弥。不思議な雰囲気をかもし出し、元気一杯に見えて、実はとても危うい心の持ち主を、アホに見える(りっぱにアホに見えた)ほど元気(?)に演じている。彼のデビュー作でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞した「誰も知らない」で見せた自然そのものの(演技している意識がないように見える)演技から、自然を「演じている」感じがして、俳優としての彼の成長がうかがえる。何よりも目が印象的。どんなにバカなことを言ったり、バカなことをしたりしても、無機質な感情を映さない目が怖い。最初に登場した時「彼は死ぬために屋上に来たんだな」と思った。屋上にいたワラが、最初に彼の心の傷に包帯を巻いてあげることになったのは、彼にとって幸せな出会いだ。

 冷静なワラを演じるのは、石原さとみ。ワラの冷めた表情と繊細な表情、激情に動かされた時の表情を演じ分けている。監督は堤幸彦。私は堤監督の「トリック」のファンだ。「明日の記憶」のような社会性の高い映画や、今回の「包帯クラブ」のように深刻な心の悩みを抱える高校生を細やかに撮れる監督は、どのような感性を持っているのか興味がある。

 「包帯クラブ」の趣旨は分かるし、それによって癒される人もたくさんいるだろう。だが、私自身は「癒される」とはあまり思わない。それは、あまりに現実的なのだろうか。子供と大人の微妙な年代の彼らだからこそできた行為なのか。

 映画を観たあなたは、「包帯クラブ」で癒されたいですか。それとも「偽善」の一言で片付けてしまいますか。観た人にアンケートをとってみたい! と思わされる作品だ。

×××××
「包帯クラブ」(2007年、日本)
監督:堤幸彦
原作:天童荒太
出演:柳楽優弥、石原さとみ、田中圭、貫地谷しほり、関めぐみ、佐藤千亜紀
9月15日、全国ロードショー。作品の詳細は公式サイトまで。
◇ ◇ ◇
特集:映画の森

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『包帯クラブ』(ほうたいくらぶ)柳楽優弥(やぎら ゆうや)石原さとみ(いしはらさとみ)田中圭、関めぐみ、佐藤千亜妃http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070912-00000076-sph-entあらすじある日落ち込んで病院の屋上にいたワラ(石原さとみ(いしはらさとみ... 映画村【2007/09/12 22:10】
映画「包帯クラブ」へんてこな名前だ。石原さとみ、20歳の制服姿 映画「包帯クラブ」で舞台あいさつ2007年9月16日 紙面から 映画「包帯クラブ」(堤幸彦監督、名古屋ピカデリーなどで公開)に主演した柳楽優弥(17)、石原さとみ(20)らは、東京・有楽町の丸の内T 楽器が大好き【2007/09/17 10:51】
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